<<研究会>>

ナノサイエンス、ナノテクノロジー分野において、専門領域を越えた研究人材による科学技術研究と異分野研究領域の融合を推進し、新しい研究コンセプトの提案を目指します。

             

研究会のコンセプト


■界面ナノ科学研究会
委員長  一杉 太郎 (東北大学WPI-AIMR 准教授)
 “界面はデバイスそのものである”と、ノーベル賞受賞者であるKroemer 博士は喝破した。これはシリコン半導体素子や半導体レーザー素子を想定した言葉であったが、今、この一言は色あせるどころか、ますます輝きを増している。
 ナノテクノロジーの進展に伴い、原子レベルで制御された構造作製や、一つ一つの原子や分子を操ることも可能となってきた。そして構造が微小化するにつれ表面の効果が顕在化し、表面上に形成する界面が物性を決定づける要素となっている。持続的発展可能社会の担い手でもある太陽電池や蓄電技術は、原子レベルでの界面制御の場である。そして将来的には、量子効果と多元素による新機能の組み合わせによる全く新しい可能性も期待できる。
さらに、表面・界面研究は各種ナノ計測技術進展の牽引車ともなっており、 科学研究の知識と技術の源泉と言っても過言では無い。近代科学では、 従来の物理、化学、無機物、有機物という縦割りは用をなさない。その先鋒 である“界面ナノ科学”は、多くのフィールドの研究者の知恵を動員して開拓 すべき一大研究領域である。そのような多彩な研究者が集まってなされる活発な議論こそが“表面・界面”であり、そこから新たなナノ科学が花開くことを望む。
基板と薄膜、そして界面

■バイオ単分子研究会
委員長  佐々木裕次(東京大学大学院 教授)
 生命現象を真に理解するためには、1つ1つの分子の動的な挙動を考慮して研究を進めなければならない。幸い分子生物学の進展において、マクロな分子量から多くの分子間相互作用が理解されてきた。しかし、より局部的で過渡的な重要生命現象を研究対象とした場合、1分子レベルの計測と1分子レベルを取り扱うための学問体系が必要となる。本研究会は、1分子に関連する動的情報が空間的及び時間的にどこまで計測可能か、そしてこの1分子がシステムに挿入された時、どのような拘束を受けるのか、また1分子を取り扱う上での物理的化学的問題点はどこにあり、それを克服するためにどのような学問体系が今後必要となるのかを集中的に議論する場としたい。本研究会のキーワードは「動的1分子」、「機能制御」 、「システム」である。 
バイオ単分子研究会

■スピントロニクス研究会
委員長  大谷 義近 (東京大学物性研究所 教授)
 スピントロニクス研究の根幹を担う基本原理がスピン変換である。伝導電子のスピン角運動量が交換相互作用を通じて局在電子に受け渡されるとスピン移行トルクが生じ、逆に歳差運動する局在電子スピンから伝導電子スピンに受け渡されるとスピンポンピングが生じる。一方で軌道角運動量に着目すると、電場により誘起される軌道角運動量がスピン軌道相互作用を介して磁気異方性に変換される。このような研究の流れの中で、巨大スピンホール効果、純スピン流誘起磁化反転、スピントルクダイオード効果、スピンゼーベック効果、絶縁体へのスピン注入、スピン起電力、強磁性超薄膜の磁気異方性電圧制御など新奇なスピン変換に関わる物性の研究報告は、枚挙に暇がない。その結果、エレクトロニクス産業の多くの関心を集め、さらなる発展が期待されている。本研究会では、日本のスピントロニクス研究の中心メンバーが集まり、スピン変換を用いた新しいスピントロニクス機能を開発する。 スピントロニクス研究会

■ナノカーボン研究会
委員長  齋藤 理一郎(東北大学大学院 教授)
 多炭素原子で人工的に作られた、ナノメートルの大きさの物質を総称してナノカーボンと呼ぶ。ナノカーボンにはいろいろな種類・次元性があり代表的なものとして、フラーレン(閉曲面分子、0次元)、ナノチューブ(円筒面分子、1次元)、グラフェン(黒鉛の1原子層、2次元)、ナノダイヤモンド(結晶、3次元)などがある。1991年ナノチューブ、2004年グラフェンの発見以降、世界の研究者数は増加の一途をたどっている。ナノカーボンは、応用展開においてナノテクノロジー研究の先導的な役割を果たし、また既に実用化されている炭素繊維などの炭素材料研究に続く次世代の究極の半導体材料として、特に注目を集めている。
 ナノカーボン研究会は、ナノカーボンの基礎から応用まで、また物理、化学、生物、工学、医学、応用などの広い分野にわたって調査研究を行い、統合的な科学と技術の発展に貢献する。研究会では、特に近年のグラフェンとカーボンナノチューブの研究の急展開に焦点をあて、構成委員の研究発表と招待講演を行い、討論に十分な時間をかけ、参加者の創造性を刺激する高度な機会を提供する。最先端の情報交換によって、基礎科学と応用の両面で世界における優位な成果を目指す。また若い世代の育成を考慮し、研究会の一部として夏の学校を開催する。
ナノカーボン研究会

■水和ナノ構造研究会
委員長  田中 伊知朗(茨城大学工学部 教授)
 ナノメーターレベルで生体内機能を司るタンパク質やDNAの周りには、非常に多様な形で水が存在し、水和して、安定な状態を保っている。タンパク質や核酸DNAのような特異的で大きな構造を持つ生体高分子と比べて、小さな分子である水が、生体高分子とどのように相互作用をして生命活動を成立させているかは、未知な部分が多い。たとえば、タンパク質やDNAが機能する直前の分子認識における水の役割、化学反応中の状態における水の関与したプロトンや水分子自体の授受および水素結合の形成・解消、そして、反応後の水の脱離やタンパク質・DNA分子への再水和・再配置のように、生体機能の中において、ナノスケールで絶えずゆらぎながら重要な役割を、黒子のように、果たしている。  
 このような水和ナノ構造の解明には、水素位置決定を得意とする中性子回折法が重要な役割を担い、震災後復旧しグレードアップされるJ-PARCの中性子回折計(茨城県生命物質構造解析装置;iBIX)で、 ATPや糖との複合体も含めたタンパク質水和構造に関して、水(H2O)だけでなく、オキソニウムイオン(H3O+)、水酸化物イオン(OH-)の同定を目指す。  
 本研究会では、さまざまな実験(中性子・X線解析、熱量測定、分光、遺伝子工学)及び計算科学分野の研究者に生体高分子中の水和水について議論を深めてもらい、他の研究会とも連携して関連分野の飛躍的な発展を狙う。
水和ナノ構造研究会